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博士課程の就職(明るくない話)

博士課程とか博士号というのは、大学院に行かなかった人にとっては基本的に遠い世界の出来事のようなものだと思う。最近、博士号を得た人のその後に関する追跡調査(以下追跡調査)がでたので、今日のテーマは任期制雇用の問題である。

 

webronza.asahi.com

 

そもそも博士課程が何かというと、大学で学士取得した人が更なる教育を受けるためにいくところだ。修士課程*1が2年、博士課程*2が3年。修士は大体2年で取れるが、博士は最低3年でもっとかかる人はかかる。大学の教員になりたい場合は博士号必須。日本の場合、卒業時には若くても27歳である。

追跡調査の内容

就職の難易度は分野によってまったく異なり、博士号取得後の就職は大学や研究所・民間企業の就職など多岐にわたる。もちろんなかには就職できない人もいる。追跡調査はこの就職の状態を調べていて、約5000人が回答した(回答率が38.1%)。回答者のうち約4割が民間企業(たいてい正社員)、大学や公的研究機関などの「アカデミア」に入ったのは約6割になる。

追跡調査における問題

この追跡調査の問題は、二つある。(1)回答していない人がどうなっているのかわからないこと、(2)任期制雇用の人々が任期終了後どうなっているのかがわからないということだ。

(1)回答していない人がどうなっているのか

この手の調査で回答しないということは、面倒だからか結果に納得してないからという理由が多い。 だから、より正確に言うならば、この調査の結果は、博士号取得後は、15%が民間企業、 23%アカデミア、不明が62%と書くべきだろう。 この不明の62%の中には、おそらく回答した人々よりも、就職先がなかった人間や何かしら不満ある条件で就職した人間が多い。

また、この調査は博士号を取得した人間のみを扱っているが、博士号を取得していない人、つまり単位取得満期退学を選択した人や退学した人々は含まれない*3

 

(2)任期制雇用の問題

追跡調査によれば、回答者のうち大学や公的研究機関などの「アカデミア」に入ったのは約6割になる。そして、アカデミアの8割以上が任期制雇用である。つまり、博士号取得者の半分が任期制雇用にあたると思われる*4

任期制雇用とは、3年・5年など一定期間のみの雇用契約で、彼らは大きく3つのグループに分かれる。(1)青田買い、(2)使い捨て、(3)出身大学によるアフターケアである。(1)青田買いは、"見所があるがまだ業績が少ないので、在任中に論文をどんどん書いて業績をつんでください。順調に行けば常勤職員(任期なし、テニュア)として雇用します"、というものである。研究者になりたい人たちのエリートコースみたいなものだ。ふたつめのグループは、言い方は悪いが(2)使い捨てグループである。ある種の派遣社員のようなもので、大学が授業や雑務などを安い労働力にやらせようとしており、任期が切れたらさようならである。その後の身分保障などはなく給料も安いが、職歴があるほうがましなので、博士号をとったばかりの人はとりあえず条件が悪くとも任期ありの仕事に就き、任期のあるうちに業績をつんで常勤になることを目指している。最後のグループ(3)出身大学によるアフターケアは、就職先が見つからなかった卒業生に対して母校が研究環境を提供するため、安価で雇っている場合である。どこかの大学に所属していないと、論文すら読めないため研究が出来ない。研究が出来なければ業績も積めずどうしようもない。それを回避するために、大学が非常勤講師などの口を与えることで大学職員の身分を与え、論文が書ける環境を提供している。

 

当たり前だが、将来の雇用継続は口約束で行われているので、だれがどのグループなのかはこのような調査からは把握できない。そのため、博士号取得後5年後などの追跡調査が望ましいと思われる。

 

ところで、文中ではビミョーといわれている博士号の価値だが、どう考えてもマイナスである。修了後のスタートが平均400万の借金から始まるにもかかわらず、ワープア同然の環境から社会人生活スタートさせる人のほうが多いのだ。たとえどんなに優秀な人でも、運が悪ければワープアという現実が待っている。これが過酷でなくてなんだろうか。

*1:博士前期課程と呼ぶところもある

*2:博士後期過程とよぶところもある

*3:私の周りでは民間企業に就職していた人が博士号を取得せず単位取得満期退学を選択ていたので、そこも見たほうがよいと思われる。おそらく結果が改善される。また、博士課程では精神的な問題からドロップアウトするケースもあった

*4:専任講師など常勤からスタートする人は1割程度ということでもある