相手を説得するときは、相手の大事なものは大事にしないといけない

最近読んだお悩み相談が、ポイントはそこじゃない、としか思えなかったので書きます。私の結論は、相手の大事なものは大事にしないといけない、ということです。

 

お悩み相談を要約すると、「長年付き合ってきたバリキャリ彼女が自分の海外駐在についてきてくれない。最近後輩に引かれていてクリスマスも過ごすつもり。彼女のほうが基本的な価値観が合うが、後輩のほうがかわいく気遣いができる。どちらを選ぶべきか」です。

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相談の答えとして藤島さんは、「もう後輩を選んでいるよね。長年一緒にいてくれたことへの罪悪感なんて考える必要はない。あなたといることより自分の仕事(ある意味、仕事ごとき)が大事だと言い切る女は、これからのあなたの人生には必要ない。もっとご自身のことを一番に考えて、ご自身を大事にしてくれるひとがどなたなのか、という観点で選ばれたらいかがでしょう」と答えます。

前半の、あなたはもう後輩を選んでいる、という点には同意しますし、とっとと彼女と別れればいいとは思います。罪悪感を感じるなら、相手に時間を無駄遣いさせないよう出来るだけ早くとっとと別れるほうが相手にとっても助かると思います。

 

この相談者に思うことは、海外駐在を伝えるときについてきてほしかったのであれば、つまり仕事を犠牲にして自分を選んで欲しかったのであれば、彼女に仕事をやめて欲しいと真摯にお願いするべきだったということです。なぜなら彼女にとって仕事は大事なものだからです。
 
相手のことを説得したければ、相手の気持ちになって考える必要があります。この場合は、彼女にとって仕事が大事であるということを見落としてはいけないのです。仕事を大事にしている人にその大事なものを捨てろというのであれば、しっかり向き合って説得をしければならないのです。他人の大事なものを、そんなものたいしたものじゃないという態度でやめろといっても聞くわけがありません。その人の大事にしているものをないがしろにするということは、その人自身をないがしろにしているようなものだと受け取られます。
 
じゃあどうしてこの人がそれを無視してしまったかというと、環境による問題と、価値観への無理解があげられると思います。
環境
この男性は商社勤めなので、収入も転勤も多く、同じ職場の人々の奥さんは仕事をやめたり専業主婦をしている女性が多いのだと思われます。だからこの人も自分の奥さんになる人がそうしてくれると軽く考えてしまったところがあるのでしょう。ところが、彼女にとってはそれはあたりまえではありませんでした。
無理解
女性がよく言う(そして面倒な)ことばとしてしばしば「仕事と私どっちが大事なの」という問いがあげられますが、この問いには正しい答えはありません。どちらも大事でかけがえのないものだからです。食べていくためには仕事をしなければなりませんし、人はパンのみで生きるにあらずですからパートナーだって必要です。そしてそれは女性にとっても同じです。
でも、この男性は自分がこの難しい問題を間接的に選択させようとしたことに気がついていません。そもそも、こんな大事なことをただ匂わせただけで相手が自分を選んでくれると思い込むような相手を舐めた態度が、実は、この男性を選ばない原因の一つとなってしまっています。自分のことを大事にしてくれない人のことを言うことに従う人はいません。
 
だから解答において"仕事ごとき"といっているのはいただけない。仕事もパートナーも、どちらも当然大事です。彼女は仕事を大事にしているのに、彼女の大事なものを価値がないかのように振舞うのはいかがなものでしょうか。彼女と一緒に歩んでいきたかったのであれば、彼女の大事なものに理解を示さなければならないのです。
 
男女逆にして考えてみるとわかりやすいと思います。商社勤務で海外駐在予定の彼女と専門職の男性のカップルがいて、彼女が海外駐在に仕事をやめてついてきてほしいとにおわせてくる。男性が仕事をやめたいと思っているのであれば別ですが、そうではなければイライラするのではないでしょうか。仕事をやめるという大きな決断を迫られているのに、相手はただ「そうしてほしいなー察してよ!」というそぶりしか見せない。自分にとって大事な仕事をやめるのにそんな態度をとられてたとき、仕事をやめてもいいと思えるのでしょうか。仕事を大事に思っている人でなくとも、軽んじられているような気がして嫌な気持ちになるのではないでしょうか。自分の利益しか考えていない察してちゃんに仕事という大きなものを投げ出す譲歩なんて、だれもやりませんよ。
 
だから、仕事を続けたいバリキャリ女性に仕事をやめてほしいと思うのであれば、それはちゃんと話をしなければいけません。女性だから仕事をやめるだろうとなめてはいけない。相手の価値観を理解する、これは他人を説得したいときには念頭に置かなければならないことです。

 

最後になりましたけど、人生、自分の望むとおりになるとは限りません。相手がいればなおさらです。相手がいることで相手のほうが犠牲を払うことには、説得に細心の注意を払う必要があります。自分がどういった譲歩なら出来るかも重要です。もちろん相手を替えると言うのも選択肢の一つですが、もし、替えたくないのなら、真摯に話をする必要があります。