働く男性がバリキャリ相手にすら専業主婦を求める問題

バリキャリ相手にすら専業主婦を求める問題は、いつか書こうと思ってた問題のひとつだった。ちょうど研究者志望の方がバリキャリ志向の人が(2015/12/05 修正)以下の記事を書かれていたので、書こうと思う。
(なお、私は専業主婦を否定するつもりはありません)
 
5.言わずもがなだけど,女性が働くことを当たり前と考えているか(しかし,建前と本音が違うこともあるし,いきなりこの話題されても困るだろうから,じわじわ探る)
(中略)
それから5。重要でありかつ難しいのは,この「本音と建前は違うかもしれない」というところですね。そしてきわめて残念なことに,この「隠れ保守」「潜在的家父長」は,高学歴男性に割と多い印象である。彼らは高い教養を身につけているから,表向きにリベラルを「装う」ことの重要性は承知している。しかし付き合いが長くなるにつれ,彼らはその保守性を露わにし始める。私の友人たち(東大卒)がその元彼たち(東大卒)から言われた言葉の例はもう,口にするのも恐ろしくてここには書けないくらいだが,まあ要するに,「男と女なら,女が仕事をやめるのが当然」みたいなことを平然と言い出す。相手がいかなる「バリキャリ」と言われる部類の女性であろうともである。しかしながら,当然ながら知り合いたてや付き合い始めの時点においては,彼らはリベラルなフェミニストを装っているので,非常に見極めづらい。まあ,遅かれ早かれボロは出るので,そこは友人の言う通り,「じわじわ探る」しかないのだろう。そしてボロが出たら,迷わず切り捨てるしかないのだろう。もう30前後にもなって,人はそうそう変わるものではない。
 
 
これはとてもよくわかる。
毎日終電かタクシー帰宅の激務の人と付き合っていた友人が別れたときの話である。彼女らが家事について話しあったとき、「自分は激務だからできないけど、家の中に他人を入れたくない(家事代行サービスはいやだから、きみがやってね)」といわれたという話があった。
この問題の解決策は複数存在する。
  1. 専業・兼業主夫になる
  2. 専業・兼業主婦になる
  3. 彼側が転職する
  4. 家事代行サービスを頼む
  5. どちらかの父母など家族に頼む
  6. 彼女が家事を全部やる
 
5は、どちらも実家が遠くだったので、実現不可能だったそうだ。
彼女の中には、1・3・4の選択肢があり*1、彼女はバリキャリ系で仕事を続けたいタイプでありそのことを公言していたので、4を提案したが断られた。彼の中には2と6しかなかったからだ。つまり彼の中には彼自身が協力・譲歩する3・4の選択肢は一切なかった。
彼女は仕事をしつつ家事を押し付けられる未来はさすがに耐えられなかったようで、そのまま別れた。子供ができてもその男性が育児に協力的になるとは思えないし、男性側の意識が変わらなければ結婚してもやっていけないだろう。
この男性側の認識が判明したのは、付き合って1年以上がたった頃だったそうだ。彼女の行動を1年以上見ても、男性本人は仕事をあきらめて自分に尽くしてくれると思ってしまった、と言うのが大変不思議だった出来事だった。
 
自分が仕事をやめないことを決めるのは自由だが、相手に仕事をやめることを強要すること、相手にだけ問題解決を押し付けるのはとても身勝手なことだろう。
 
昨今の常識としては、女性側が仕事も家事も完璧にすることはとてもきついことだ、という認識があると思う。
ではなぜ高学歴の人々(あるいは男性)は、表向きリベラルを「装い」つつ、妻にそれを求めるのだろうか*2
保守的であるよりリベラルのほうが受けがいいので、それを「装う」こと自体はそうおかしなことにはうつらない。ではなぜ、妻にそれを"当たり前"のこととして求めるのだろうか。理由は精神的なものと金銭的なものがあるが、大きな問題として、夫が妻に対して大きな要求をしているのにそれに気がついていないという問題があると思う。
 
金銭的なもの 実現可能性
むしろ高学歴だから、相手に専業主婦を実現できてしまう現実がある。
高学歴だとだいたい高収入で、職場にいる人たち(普段接する人々)も同様に高収入だ。その中でも結婚している人々は、もちろんバリキャリや正社員の奥さんもいるが、奥さんが無収入でもまったく問題なく生活できるので奥さんが専業主婦だったり小遣い程度に稼いでいるパターンが少なくない。つまり、専業主婦を維持できてしまうのである。そのような人々はお互いに納得して専業主婦になったり仕事をやめたりしているので、それなりに仲良く良い家庭を築いている。お金があるがゆえに壁にぶつからず、旧来の価値観を相手に要求し、相手の要求も実現することができてしまうのだろう。
一方でお金がなければどうしようもないので、どちらかが専業主婦希望であっても選択の余地なく奥さんに働いてもらうことになることもある。"いまどきは共働きが主流だから"と、多少の摩擦はあれど共働きを続けていくことができるのだ。
 
専業主婦のイメージのよさ
上記のブログでも書いてあるように、専業主婦だと転勤などにも対応してくれるため、夫にとっては不安がない(あるいは都合が良い)。
そして、自身の親が専業主婦だったりすると、家族イメージが"いつも母親は家にいる""家事がちゃんとされていてきれいな家"のようなイメージなので、専業主婦のほうが言いと思っていたりする。その気持ちはわからなくもない。
 
精神的なもの 思考停止
一世代前だと、"夫が外で稼ぎ、妻が家の中を整える"が当たり前だった。
女性の社会進出は進んでいるものの、女性は今でもさまざまな壁にぶつかる。それは就職活動だったり職場環境だったりセクハラ、パワハラ、マタハラなど、多岐にわたる。今回のような、結婚したら職場をやめるかどうか、もそのひとつだ。女性側は来否ベントのたびに働くかどうかについて考えさせられたりするので、仕事を続けるかどうかは、大きなひとつの問題として働く女性には認識されている。(もちろん、仕事を続けたいと思わない女性や専業主婦志望の女性も存在する。私はその人たちを否定しない)
 
ところが、男性はそのような問題の当事者ではないことが多い*3
残念なことに、当事者でなければ問題について真剣に考えない人というのは存在する。さらに悪いことに、妻が働くかどうかという夫も当事者である問題が起こっても、自身は当事者ではないと考えてしまいおざなりな対応しかしない人も多い。つまり、男性は結婚する段になって始めて、女性が働くか(妻が仕事を続けるか)という問題あるいは現実とぶつかるのである。 個々の例を見ていると、これまでが順調だったからその後も順調と考えてしまって自分の要求が通ってしまうと考えてしまったらしき人や、それまでバリキャリと付き合ったことがなくて恋人の仕事に対する意識がわかっていない人、女性はみんな専業主婦になりたがっていると思い込んでいる人、自分が十分稼いでいるから働く必要はない*4と思い込んでいる人など、さまざまであった。
 
そして、件の友人の元恋人のように、「旧来の価値観通り、家事は女性の仕事であり、女性が仕事をやめてでも家事問題を解決するのが当たり前」という考えを改めない人間が一定数現れるのである*5
この手の人々は、働くかどうかは最終的に女性に決定権がある、ということを認識しておらず、バリキャリ女性からすると頓珍漢なことをいい、失望されてしまうことがある
 
簡単に言うと、それまで結婚後の"生活"イメージをまったく考えておらずもうとにかくイメージがふわっふわしていて、実際に結婚を考える段階になってはじめて自分の結婚後の生活をイメージして、それが将来の伴侶予定の人の考えとまったくもってずれている場合が、最悪なのである*6。真剣に考えてなかったツケがきてしまったといってもいい。
 
その他の要因 精神的なもの いわゆる承認欲求的なもの
世の中にはしっかりものの女性やかっこいい女性に惹かれる人がいる。そして、その中には自分に自信がない人がいる。そういう人は時々、人に頼られる俺・すごい彼女に頼られる俺になりたい願望を爆発させて、結婚の際に、バリキャリ系の女性に自分を立てたり自分を支えることを要求することがある。
要するに、このタイプは恋人を使って自信のなさを解消しようとしており、自分の心の穴を恋人を使って埋めようとしているのだ。そして、心に穴が開いているがゆえに、根本的に矛盾した気持ちを持っていることには気がつかない。
数は少ないもののこの手の人は存在し、次第に矛盾した願望を募らせていくのでどこかで終わるのだが、まずいことに最初はうまくいくのである。
 
しまいに
この問題は、一種のコミュニケーション不全あるいは人としてまずい案件だとおもう。
女性側は女性側で、結婚後・出産後の仕事について男性側にはっきりと伝えなければいけない。わかっているだろうと思って、適当に流していてはいけないのだ。もちろんこれは男性にも当てはまることで、相手に共働きか主婦か希望を伝える必要がある。これができていないのであれば、それはコミュニケーションの問題だ。
 
一方で、夫・妻側にはっきりとした希望がありそれを伝えたにもかかわらず、その希望をまともに取り合わず、「昔はこうだった、これが常識だ」として、自分の理想を押し付けてしまうケースは、人がマズイ案件だと思っている。自分にとってはとるにたらないことでも、相手にとっては重大なことはいくらでもあり、自分の要求が相手にとってどれだけ重いものなのか、理解するための歩みよりはとても重要だと思う。それを放棄してしまうような人間が相手では、結婚後に生じうるさまざまな問題を協力して乗り切ることは難しいだろう。特に女性のライフイベントにおける職業選択は、社会問題として認識された知名度の高い問題だと思うので、これで話し合いがろくにできない相手とはやめたほうがいいと思う。

*1:1は相手が望まないだろうからと言う理由で提案せず、3に関しては家事だけではなく健康被害を考えてのことだったことを一応記述しておく

*2:高学歴の人だけとは限らない

*3:特に結婚前はそうだろう。もちろんその問題を見聞きはするし、時には関係者にもなりうるのだが

*4:お金の問題ではないことを理解していないケース

*5:なかには、男性自身が持っていた偏見を認識し、何らかの解決が見られるケースもある

*6:これはもちろん男女逆のパターンでもおこりうるもので、男性が共働き希望で女性が専業主婦希望というケースもある。私が聞いたケースでは、男性がちゃんと希望を伝えていたにもかかわらず、女性が真剣に捕らえておらず駄目になった