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大学院博士課程における女性の生きづらさ

先日ある女性研究者のインタビュー特集を読んだ。

日本の大学で教鞭をとる女性はまだまだ少なく、将来増加することが期待されている。しかし実際のところ進学をあきらめる女性や進学しても途中でやめる人、アカデミアに残らない人も多い。生き延びて研究者になった人はインタビューを受けたりするものの、当然ながら生き延びることができなかった人にスポットライトが当たることはない。

私はもともと研究職につくことを目指して大学院に進学したが、途中でやめて企業に就職した。やめた理由には向いてないと思ったことなどいろいろな理由があるが、ひとつの理由としては研究職の就職のきつさと女性が生き延びづらい環境がある。ここでは、大学院と言うものがどのような点で女性(そして男性)にとって生き延びづらいところだと思った理由を書きたいと思った。私が感じたことは、おそらく一昔前に企業で働いていた女性が感じたこととそれほど変わらないと思うが、せっかくなのでまとめる。
*私は女性向けと書いたが、男性にも大いに当てはまる部分はあると思う
 
なお、私がハラスメント被害にあっている人に対してできるアドバイスは少ない。とにかく証拠が残りにくいので、セクハラであればふたりきりにならないこと、録音機器を購入し大学では常に録音すること、日記をつけること、友人などにメールで被害を報告すること(証拠になる)、額内外にセクハラ・パワハラ対応機関があれば相談にいくこと。証拠が残りにくいので、何らかの形で残るように心がけたほうがいい。
 
性別によって研究指導が異なる恐れ
  • 性別によって研究に対する反応や評価が異なる*1
  • 性別によって指導が異なる教授や先輩の院生がいる*2
  • 女性が将来結婚したり子供を持ちたがることを理由に、「そういう学生には直接指導したくない」と発言
 
この辺は企業で起こることに似ているところがあるので想像しやすいと思う。まずいことに大学院では、セクハラをさけるためふたりきりにならないようにしようとすると、個人指導が受けられなくなると言う悲しいことがおこる。これは死活問題だ*3
 
性別によって生活環境、研究環境が異なる恐れ
  • 女性全般に対する差別的な発言(女性が増えることに対して、学生の"福利厚生"に良いと発言)(第一線で活躍している女性研究者個人に対して性別を皮肉った発言(遺伝子は女性、性別は女性、など)
  • 女性であることを理由に、おとなしくするように指導
  • 女性であることを理由に、飲み会での料理のとりわけやお酌をさせたり、研究室でのこまごまな雑用をおしつける
  • 学生に対して恋人の有無などプライベートなことを尋ねる
  • 特定の学生に対して教授自身の息子・娘との結婚を勧める*4
  • 教授が特定の学生と二人きりになろうとする、必要がないのに女性の体に触れる
 
企業でいえば、上司がセクハラ・パワハラ上司だった、というケースに近い。
 
なぜ学生がうまく対応できないのか
  • 学内にセクハラ・パワハラに対応できる機関がない*5、あるいは機能していない
  • そのような機関の存在を学生が知らない(知識がない)
  • (そういう機関があっても)大学側が教授をかばうケースがある
  • 学生同士の揉め事の場合、女性に非がなくても女性側が我慢するように指導教官から強制されるケース
  • 加害者が被害者に対してプレッシャーをかけ、相談できない状況におく、あるいは相談前につぶれてしまう
  • 女性比率が低く縦あるいは横のつながりが薄いため、友人ができにくく、相談相手を作りにくい
  • 研究室は密室であるため、証拠を得ることが難しい*6
  • 相手が教授など上の立場の人間であった場合、研究指導や将来の就職に影響が出ることを恐れて訴えにくい
なぜこんなことが起こるかはいくつか理由があるだろうが、女性が少ないので味方が少なく相談する相手も少なく学生自身がどう対応していいかわからなくなってしまい、そうこうするうちにエスカレートしてしまうことがある。また、研究室に女性の先輩や後輩がほとんどいない場合、おかしな人物の情報が共有されないことがある。特に女性は学生のうちはおとなしく目立たないようにしておかないと、周囲からたたかれる風潮が見られる。
また、外部の人間に相談しても、大学教授という肩書きのため、信じてもらえないことがある。そして私のように逃げ出した人間は、証拠がなかったり訴え出るコストがあまりに大きいため、訴えることが少ない。
 
企業で働いているでもセクハラ・パワハラにうまく対応できないことはあるが、企業と大学の大きな違いとしては、セクハラやパワハラを指摘した際に研究指導・将来の就職に影響する恐れがあることだろうか。このことは経験していないとわかりづらいかもしれない。
 
たいていの学生は有名な教授を指導教官として選ぶので、そういう人々は学会でもそこそこ知られていることが多い。つまり教授は大学を超えた横のつながりを持っている。学会に行くと教授たちはほとんどが知り合いだ。学会に来ない人もいるが、そういう教授はあまり研究をしていない人が多く論文本数も少ないので、あまり知られておらず指導している学生も少ない。これは大学の研究職に就くときにも効いてくる。応募者の評判をその指導教官などに尋ねるのは実は良くあることだ。
 
そこに、○○という学生が××教授ともめたという噂が発生したらどうなるだろうか。普通は教授のほうを信じるので、教授に非があるケースでも被害者である学生が更なる被害を受けてしまう恐れがある。たとえ被害者が学生であることがわかっていても、たかが学生を助けるメリットはないので、やはり就職が難しい。
 
上記のリストには直接見聞きしたこともあれば、被害者から聞いたこともある。そして問題は、これが珍しいケースではないと言うことだ。こういうことは多かれ少なかれ、あるところにはある。
 
私自身、指導教官や同じ学生などさまざまな方向からいろいろなことを言われた。納得できるものもあれば、明らかに理不尽なものもあった。研究に対する評価が性別によって異なると感じたこともあれば、研究生活以外の私生活について口出しされることもあった。
 
ハラスメントが指導教官によるものであれば、教官を変更することで避けられることもあるが、自分のテーマに合う新しい教官を見つけることが難しかったり指導教官の妨害にあうこともある。
 
ここでは女性特有の事象として書いたが、実はパワハラ被害者の男性にも当てはまる。こういうことが少しでも減るよう、祈るばかりだ

*1:積極的に発言を行っていた女性が、生意気だと糾弾されたことがあった

*2:男性により深い指導をすることもあれば、お気に入りの女性に特別指導をすることもある

*3:個人指導を受けられないとまともな論文をかけないことがある

*4:指導教官の娘と結婚している研究者は存在する

*5:今はほぼすべての大学に設置されていると思われる

*6:将来就職に影響する恐れがあるため、同じ研究室の人間から協力が得にくい